今般の医療法の改正で医療法人に有料法人ホームの運営ができるようになりました。
特に療養病床を持つ病院は、今後有料老人ホームの運営にも進出していく可能性が高いと考えられますが・・・社会福祉法人や民間企業との競合のなかで、どう有料老人ホームを運営していけばいいのでしょうか? そのキーポは?
●“官から民へ”
特に有料老人ホームは“利用者サービスの質の向上”をどう計かっていくかが、その成否のキーポイントだといわれています。
質の向上を計る、つまり人材開発をどう行うかが、大変重要になってまいります。
これからの高齢者福祉ですが、今般の流れを見ていますと、“官から民へ”、つまり公的事業主導ではなく、市場経済型の民間事業中心の流れがますます強まることが考えられます。
低所得層の高齢者ケアを公的事業で受け持ち、“一定以上の所得や資産を有する高齢者のケア”は民間が担当するという社会的な仕組みが今後ますます強まってくると考えられます。
その流れを後押しするのが、国の高齢者福祉事業としての「ゴールドプラン21」の終了(2006年3月)。
高齢社会が今後も進展するにも関わらず、公的資金による特別養護老人ホームや老人保健施設などの福祉事業のインフラ整備がスピードダウンいたしました。
一方で、民間介護事業者によるケア付き有料老人ホームなどの介護施設は急速に増加し、大手企業が開設するケア有料老人ホーム(松下電工や神戸製鋼など)の増加は目を見張るものがあります。
●提供するサービスの質の保証は重要
その民間企業が得意とするのが“提供するサービスの質の保証”です。
人材を自ら確保し、独自のシステムによって教育訓練するーそれが“提供するサービスの質の保証”につながっていくのです。
急成長している日本ロングライフ株式会社はいい例です。大阪梅田の本社近くに「ケアワーカー養成学校」を持ち、自ら養成したスタッフを自社の介護施設に勤務させることで、“提供するサービスの質の保証”を維持しています。
“提供するサービスの質の保証”という点では、これまで介護事業の主体であった社会福祉法人はあまり得意ではありません。今後、自前の養成所を持つなどの自助努力が必要になってきますが、民間企業との差を埋めるのは容易ではありません。
その点、看護師等の養成に実績のある医療法人は大変有利な環境にあるようです。
ちなみに養成の必要なのは、福祉施設専門の看護師、臨床心理士、社会福祉士、介護福祉士等ですが、特に重要なのがケアワーカーの教育訓練の徹底です。
ケアワーカーは介護保険制度立ち上げに伴って大量に養成されましたので、必要最小限の教育しか受けていません。食事介助、入浴介助、排泄介助の方法とレクリエーション技法しか学んでいまいのです。
要介護者の安全管理、医学的管理、そして対象となる高齢者の心理、QOLに対する配慮など多くの学習を必要としています。
特に必要なのが接遇時の応対の仕方。実践的にケーススタディを繰り返し行うことで、学習の効果を高めることができます。 |